■ お年玉、小遣い、お祝い金、児童手当は?
子ども名義の預貯金は子どものものであると同時に、その原資は親などのお金であることがほとんどです。そのため、離婚の際に財産分与の対象となるのかどうか判断に迷われる方も多いのではないでしょうか?
そこでこの記事の前半では、財産分与とは何か、子どもの預貯金が財産分与となるのか、について解説します。また、後半では、お金の種類ごとに財産分与の対象となるのかについても解説したいと思います。
財産分与とは?
財産分与とは、夫婦の共有名義の財産(①)、あるいは婚姻後に夫婦が協力して築いたと認められる財産(②)を夫婦で分け合うことをいいます。
①の典型例は不動産(土地と家)です。
不動産については夫婦共有名義とされている方も多いです。ただ、財産分与で不動産を物理的にわけるのは不可能ですよね。
そこで、不動産が財産分与の対象となる場合(住宅ローン残高が不動産の評価額を下回る「アンダーローン」の場合)は、不動産を売却して現金化し、手元に残ったお金を二人で分け合う、という方法を取ることが可能です。もちろん、売却せずに、夫婦いずれかが住み続ける方法を取ることも可能ですが、売却に比べて検討しなければならないことが多くなります。
②の典型例はあなたやパートナー名義の預貯金です。
通帳の名義は関係ありません。夫名義の預貯金も、婚姻後に夫婦の協力によって築いたと認められる限りは財産分与の対象となります。
子どもの預貯金と財産分与に関する基本的な考え方
「子どもの将来のために」と思ってお年玉、児童手当、親戚などからいただいたお祝い金などを子ども名義の口座に貯金している方も多いと思います。ただ、子どもの預貯金とはいえ、実質的に夫婦の共有財産と認められる場合には、やはり、財産分与の対象となります。
判例(東京地方裁判所 平成16年1月28日)は、以下の事実関係、理由から、子ども名義の預貯金を財産分与の対象と判断しています。
【事実関係】
●子どもは長女が10歳
●子ども名義の預貯金の合計額は154万円
●教育費に充てるために貯金していた
●お年玉や夫の収入を主な原資としていた
●子どもが入出金したことはない
【理由】
●子どもが管理できる金額ではないことは明らか
●子ども名義の口座は親が子どもの将来のために管理していたものと認められる
子どもの預貯金が財産分与の対象となるか否かは、次の事情を個別にみて判断します。
事情 | 財産分与の対象 | 財産分与の対象外 |
財産形成の趣旨 | 子供の将来・教育費のため | 子供が自由に使うため |
金額 | 多い | 少ない |
子供の年齢(目安) | 11歳以下 | 12歳以上 |
口座の管理状況 | 親が通帳、キャッシュカード、印鑑をもっている | 子供が通帳、キャッシュカード、印鑑をもっている |
子どもに関するお金は財産分与の対象となる?
子どもの預貯金に関する基本的な考え方をご確認いただいたところで、以下では、個別のお金について、財産分与の対象となるか否かをみていきましょう。
親から子どもへのお年玉、お小遣い
親からの子どもへのお年玉、お小遣いは、元を辿れば夫婦の預貯金が原資ですから、財産分与の対象となります。ただ、夫婦の預貯金が原資でも、親が子どもに「自由に使ってよい」という趣旨で与えたお金は夫婦の共有財産とはいえず、財産分与の対象にはなりません。その意味で、お年玉、お小遣いは財産分与の対象にはなりません。
出産祝い金、入学祝い金
出産祝い金、入学祝い金は、相手から「これからの生活費の足しに」という趣旨でいただくことが多いかと思います。そのため、通常は、夫婦の共有財産といえ、財産分与の対象となります。
誕生日祝い金
誕生日祝い金は出産祝い金や入学祝い金と異なり、夫婦のためというよりかは「子どものため」という趣旨が強いお金です。そのため、財産分与の対象にはなりません。同様の趣旨から、親戚から子どもに対するお年玉、お小遣いも財産分与の対象にはなりません。
アルバイト代
子どもが稼いだアルバイト代は、子ども個人に帰属するお金ですから財産分与の対象にはなりません。
児童手当、自治体からの各種補助金
児童手当は、児童手当について規定した児童手当法1条が参考になります。
(目的)
第一条 この法律は、子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)第七条第一項に規定する子ども・子育て支援の適切な実施を図るため、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、児童を養育している者に児童手当を支給することにより、家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを目的とする。
規定によると、児童手当は児童を養育している者(=多くは「親」)に対して支給するとされています。そのため、児童手当は夫婦の共有財産であって財産分与の対象となります。同様の趣旨から、自治体からの各種補助金についても財産分与の対象となると考えられます。
学資保険
学資保険は子どもの預貯金とは関係ありませんが、子どものための資産といえますので、ここで併せて解説します。学資保険は、保険料の支払いに充てるお金の原資が夫婦の収入(共有財産)の場合は、解約返戻金相当額が財産分与の対象となります。離婚後も契約を継続する場合も相当額を夫婦で分け合います。
子どもの預貯金に関する問題点と対処法
子どもの預貯金でよく問題となるのが、内訳がわからないというケースです。子どもの預貯金について、個別のお金を財産分与の対象とするのか対象から外すのか問題となったら、内訳を明らかにする必要があります。
お金をもらった都度、記録をつけている方はそれを参考にするとよいでしょう。つけていない方は、まずは子どもの通帳でお金を振り込んだ時期や金額を確認するとよいです。子どもの口座にはお金の出入りが少ないでしょうから、意外と簡単にどんなお金だったのか特定することが可能です。
通帳で過去の取引履歴を確認できない方やそもそも通帳をもっていない方は、インターネットか銀行から取引履歴を取り寄せることで確認できます。
今回の内容は以上となります。
最後までお読みいただきありがとうございました。