離婚届を勝手に出されたら?離婚を無効とする方法などについて解説

離婚の手続き
 離婚届を勝手に出されることってあるの?
■ 離婚届を勝手に出されるケースってどんなケース?
■ 離婚届を勝手に出されるとどうなる?
■ 無効にする方法は?
■ 事前の対策は?

この記事は上記のような疑問、悩みにお応えする内容となっています。

離婚届は夫婦そろって提出する必要はありません。夫婦のいずれかが提出すればよいことになっています。そのため、夫婦の一方が離婚届を書いて役所に提出し、離婚届の形式さえ整っていれば役所で受理される、こんな事態も十分想定されるところです。

今回は、離婚届を勝手に出された場合、出されそうな場合の対処法などについて詳しく解説していきたいと思います。

離婚届を勝手に出されてしまうケース

まず、離婚届を勝手に出されるケースについてみていきましょう。

【ケース1】無断で離婚届を作成(偽造)・提出される

離婚届の下の方には夫婦が署名・押印する欄(届出人署名欄)が設けられています。この欄には夫婦それぞれが署名しなければなりません(※)が、夫婦の一方が他方に無断でこの欄に署名し、離婚届を役所に提出する、というケースです。

離婚届の書式は簡単に入手可能ですから、相手にその気さえあれば簡単に偽造されてしまう可能性があります。
※ 押印は任意です。届出人署名欄以外は夫婦の一方が記載してもかまいません。

離婚届に勝手にサインするのは犯罪行為

ちなみに、相手が離婚届に勝手にサインした場合は、私文書偽造罪(刑法159条1項=3月以上5年以下の懲役)に、その偽造した離婚届を役所に出した場合は偽造私文書行使罪(刑法161条1項=3月以上5年以下の懲役)に問われる可能性があります。

また、離婚届を勝手に出し、役所の担当者に戸籍に事実とは異なる記載をさせた場合は電磁的公正証書原本不実記録罪(刑法157条1項=5年以下の懲役又は50万円以下の罰金)に問われる可能性があります。

もし、相手に離婚届に勝手にサインされ役所に出されそうな場合は、相手に上記の罪に問われる可能性があることを伝えてみてもよいかもしれません。

【ケース2】サインした離婚届を勝手に出されてしまう

パターン2はパターン1とは異なり、届出人署名欄にはあなた自身でサインしているものの、その離婚届を相手に勝手に出されてしまうというケースです。離婚するつもりはなくても、

  • 相手と喧嘩して、相手に離婚の本気度を示すためサインした
  • 相手から離婚届にサインするよう求められたためサインした

などという場合もあるかと思います。ただ、相手に勝手に出されるという危険があるため、離婚する意思が固まっていない段階では、離婚届にサインすることは避けた方がよいです。

離婚届を勝手に出されても受理される?

冒頭でも触れたとおり、離婚届を勝手に出されるとそのまま受理されてしまう可能性があります。そして、離婚届が受理されると、形式上は離婚が成立します。

離婚届を受理する役所の担当者は、

  • 住所・本籍が戸籍謄本どおりに正しく記載されているか
  • 子どもの親権者となる親の氏名が記載されているか
  • 届出人署欄に正しく署名されているか

など、離婚届の形式面のみをチェックします。一方、役所の担当者は署名・押印が誰によってなされたか、夫婦に離婚意思があるかなど内容面に踏み込んだチェックしません。

離婚届を勝手に出された場合の離婚は無効

とはいえ、現段階で、あなたは離婚するつもりはないわけですから、離婚が成立するといわれても納得いかないはずです。そこで、離婚届は受理されているものの、法的には、あなたが離婚に合意するという意思表示をしない限り、離婚は無効(=離婚は成立しない)とされます。

そもそも、協議離婚は①不備のない離婚届の提出(形式的要件)、②離婚意思の合致(実質的要件)という2つの要件がそろって始めて成立します。ところが、離婚届を勝手に出された場合は、少なくとも②の要件を満たさないことは明らかです。そのため、離婚届を勝手に出されても、協議離婚の成立要件を満たさず、離婚は無効となります。

離婚を無効とする方法は?

では、「離婚届が受理され形式上は離婚は成立した状態」と「離婚意思がなく実質的には離婚は無効という矛盾した状態」を解消する方法にはどうすればいいのでしょうか?方法は以下のとおりです。

調停を申し立てる

まず、家庭裁判所に「協議離婚無効確認調停」を申し立てます

申立ては相手の住所地を管轄する家庭裁判所に対して以下でご紹介する書類等を提出して行います。申立てが受理されると調停手続きに入ります。調停では、調停委員が夫婦の間に入って話を取りまとめます。

そして、夫婦間で離婚が無効であることにつき合意ができれば調停が成立し、離婚が無効であることの判断(合意に相当する審判)が下されます。一方、配偶者が調停に出席しない、出席しても合意しない場合などは、調停は不成立となります。

なお、相手が別の第三者と婚姻していた場合は、相手とその第三者を相手とした「婚姻取消し調停の申立て」を行うことも必要です。

■申立て時に必要な書類(基本書類)
・申立書及びその写し(相手方の人数分)
※書式は裁判所のHPよりダウンロード可能です。
・申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)
・相手の戸籍謄本(全部事項証明書)
・離婚届の記載事項証明書
・合意書
※申立先の家庭裁判所について相手と合意した場合

■申立先の家庭裁判所
相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所
※以下のHPで確認できます。

■申立て費用
・収入印紙1,200円
※申立書に貼付します
・郵便切手
※申立先の家庭裁判所にあらかじめお問い合せください。

参考:協議離婚無効確認調停 | 裁判所

訴訟を提起する

調停が不成立となった場合にはじめて、家庭裁判所に対し「離婚無効確認訴訟」を提起できます。なお、いきなり訴訟を提起することはできず、まずは調停を経る必要があります(調停前置主義)。

裁判所に対して訴状を提出し、期日においては、証拠(物証、人証)を提出して、離婚届の署名が本人の意思によるものではない(ケース1の場合)こと、離婚意思がなかったこと(ケース2の場合)などを立証する必要があります。

そして、証拠によってこれらの事実が認定されれば、協議離婚無効の判決が出されます。

離婚届を勝手に出された場合の戸籍は?

離婚届を勝手に出され受理された場合は、戸籍は届出通りに書き換えられてしまいます

たとえば、夫に勝手に離婚届を出されたという場合、戸籍の筆頭者が夫の場合は、妻は夫の戸籍から除籍されます。離婚届には婚姻前の戸籍(多くの場合、親の戸籍)に戻るか、新しく戸籍を作るかを選択する欄が設けられていますが、除籍後は、夫が指定した方法で戸籍に入ることになります。

調停や裁判で離婚が無効とされた後は、役所で戸籍の訂正を申請しなければなりません。申請期限は審判確定、判決確定後1か月以内です。調停の場合「審判書謄本」と「確定証明書」を、裁判の場合、「判決書謄本」と「確定証明書」をそれぞれ持参して申請します。

審判書謄本と判決書謄本は裁判所から郵送されてきますが、確定証明書は裁判所に申請して取り寄せる必要があります。申請方法が分からない場合は、調停期日(調停の場合)、あるいは判決期日(裁判の場合)に裁判所書記官に尋ねれば教えてくれます。手数料が1通につき150円かかります。

役所に離婚届不受理申出をしよう

これまで見てきたように、離婚届を勝手に出されると自分の知らないところで離婚が成立し、戸籍が書き換えられてしまいます。また、離婚を無効とするには調停や訴訟を経なければならないなど、手間や時間がかかります。

こうした事態を防ぐには、役所に離婚届不受理申出をしておくことが一番です。離婚届不受理申出とは、離婚届を勝手に出される前に、役所に対して離婚届を受理しないよう申し出ておくことです。

申出を行うには不受理申出書(お住いの自治体のHP等からダウンロード可)等の書類を役所に提出する必要があります。原則、郵送による提出は認められていません。詳細はお住いの自治体のHPで確認するのが確実です。

 

今回の内容は以上となります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の執筆者
小吹 淳

こぶき行政書士事務所 行政書士 小吹 淳
HP :https://rikon-gyouseishoshi.com/

離婚協議書、離婚公正証書をはじめとする家族(夫婦)間契約書を中心に作成する行政書士です。書面作成、その他面談等ご希望の方は、本サイトの「お問い合わせ」又は上記HPの「お問い合わせ」よりお気軽にご連絡ください。

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