【離婚後の年金】年金分割とは?種類、手続きの流れを解説します

離婚とお金

■ 離婚にあたって年金についてはどういう手続を取ればいいの?
■ 手続きを取るにあたっての注意点を知りたい

この記事は上記のような疑問、悩みにお応えする内容となっています。

20歳以上の方なら、誰もが厚生年金(国民年金を含む)か国民年金(単体)のいずれかに加入しています。年金は老後に受け取るお金であるため、離婚するにあたって「どのような手続を取ればいいのか?」、「いったいいくら受け取ることができるのか?」など、気になる方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、離婚後の年金に関する年金分割について詳しく解説したいと思います。なお、年金以外の離婚のお金に関する準備については以下の記事で詳しく解説しています。

 

年金分割とは

年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金の「保険料の納付実績(標準報酬(標準報酬月額・標準賞与額))」を夫婦で分割することをいいます。

標準報酬月額(1等級から32等級まである)は毎月支払う厚生年金保険料の、標準賞与額は賞与(ボーナス)を受け取る際に支払う厚生年金保険料の金額を算定するために用いられ、等級や賞与額が大きければ大きいほど支払う保険料が高くなる仕組みとなっています。

婚姻期間中に支払った保険料の原資は夫(妻)の給与であることがほとんどです。そして、その給与は財産分与の対象となる共有財産ですから、厚生年金記録も夫婦で分割することができます。

年金分割の種類

年金分割は合意分割と3号分割の2種類があります。以下、それぞれについてみていきましょう。

合意分割

合意分割とは、厚生年金記録の按分割合(※上限50%)につき、夫婦で合意して行う年金分割のことです。

合意分割できるのは、以下のすべての条件をクリアした場合です。

【合意分割できる場合】
■ 2007年(平成19年)4月1日以降に離婚
■ 上記以降の厚生年金記録がある
■ 按分割合について合意する(合意できない場合は調停等で決める)

なお、合意分割の対象となるのは、あくまで「婚姻期間中(基本的に別居期間中も含む)」の厚生年金記録です。

※分割を受ける側の厚生年金記録に対する持分のこと

3号分割

3号分割とは、国民年金の第3号被保険者(※)に対し、2008年(平成20年)4月1日以降の婚姻期間中の相手の厚生年金記録を分割するものです。合意分割と異なり、相手との合意(話し合い)が不要である点がメリットです。按分割合は50%(2分の1)と決まっています。

※国民年金の第3号被保険者
第2号被保険者(厚生年金保険料を負担している会社等に勤務している人)に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収130万円未満の人)。専業主婦、パート・アルバイトの方など。

合意分割の流れ

合意分割の流れは以下のとおりです。

①年金分割のための情報通知書を請求

②情報通知書を受領(①から3週間~4週間)

③話し合い(分割請求&按分割合についての合意)

④合意→できない→調停等の申立て

できる

合意書を作成

⑤離婚届提出→受理(離婚成立)

⑥年金事務所に対して年金分割請求

⑦標準報酬改定通知書を受領

①年金分割のための情報提供通知書の請求

情報提供通知書は③話し合いの際に役立つ書類です。また、離婚調停を申し立てる際には必要となる書類ですから取り寄せておくとよいです。情報提供通知書は⑤離婚成立前でも取り寄せることが可能です。

【情報提供通知書の取り寄せ方法】
●必要書類
□ 年金分割のための情報提供請求書(←ダウンロード)
□ 請求者の年金手帳または基礎年金番号通知書
□ 婚姻期間等を明らかにできる書類(戸籍謄本(全部事項証明書)など)
●請求方法、請求先
必要書類をお近くの年金事務所に持参または郵送にて提出できます。近くの年金事務所は以下から検索してください。
参考:全国の相談・手続き窓口 | 日本年金機構

②情報提供通知書を受領

請求から3週間~4週間ほどして、年金事務所から情報提供通知書が送られてきますので受け取ってください。

③話し合い

情報提供通知書を受け取ったら、夫婦で「年金分割の請求すること」と「按分割合(最大0.5)」について話し合います。

④合意、不合意

合意ができた場合はその内容を記載した書面(合意書(※)、公正証書の謄本、公証人の認証を受けた私署証書等)を作成します。作成した書面は⑥で作成する書類とともに年金事務所に提出します。

一方、合意できない場合は、夫婦の一方が家庭裁判所に対して調停(あるいは審判)を申し立てて取り決めることができます。年金分割だけの調停等を申し立てることも可能ですが、離婚調停を申立てて、その他の離婚条件(養育費等)とあわせて取り決めることも可能です。また、離婚訴訟にまで発展した場合は裁判で決めてもらうことになります。

※合意書の書式は年金事務所で受け取ることができます。

⑤離婚届提出

離婚と離婚条件(少なくとも親権)について合意できたら、離婚届を提出します。役所に離婚届が受理された段階で離婚成立です。

⑥年金事務所に対して年金分割請求

年金分割するには、離婚成立後に、年金事務所に対して分割請求の手続きを取る必要があります(合意しただけでは分割されません※1)。手続きに必要な書類は以下のとおりです。

【必要書類】
□ 標準報酬改定請求書(離婚時の年金分割の請求書)
□ マイナンバーカード(請求書にマイナンバーを記入した場合)
□ 年金手帳又は基礎年金番号通知書(請求書に基礎年金番号を記入したとき)
□ 婚姻期間等を明らかにできる書類(戸籍謄本等)
(話し合いで合意した場合)
□ 合意書(※2)、公正証書の謄本、等
(調停等の手続きで決めた場合)
□ 調停調書謄本、審判書謄本、判決書謄本
□ 請求者の身分を証明できるもの(運転免許証など)

※1 請求期限は原則として離婚が成立した日の翌日から起算して2年以内です。
※2 合意書の提出(合意分割請求の手続き)は当事者二人で行うのが原則です。ただし、二人で手続きしたくない場合は、当事者それぞれが代理人を指定して代理人に任せることも可能です。また、合意書の代わりに、公証役場で作った公正証書の謄本を提出すれば、いずれか一方だけで手続きを済ますことができます。

⑦標準報酬改定通知書を受領

請求が行われると、按分割合に基づき当事者それぞれの厚生年金記録の改定が行われ、改定後の保険料納付記録が当事者それぞれに通知されます。

3号分割の流れ

3号分割については、離婚成立後、第3号被保険者だった方が年金事務所に対して請求の手続きを取ります。合意分割と同様、原則として、離婚成立日の翌日から起算して2年以内に請求の手続きを取る必要があります。

なお、合意分割の対象期間に3号分割の対象となる期間が含まれている場合は、合意分割の請求をした時点で3号分割の請求があったものとみなされます。そのため、この場合は合意分割とは別に3号分割の請求手続きを取る必要はありません。

【必要書類】
□ 標準報酬改定請求書(離婚時の年金分割の請求書)
□ マイナンバーカード(請求書にマイナンバーを記入した場合)
年金手帳又は基礎年金番号通知書(請求書に基礎年金番号を記入したとき)
□ 婚姻期間等を明らかにできる書類(戸籍謄本等)

年金分割の注意点

最後に年金分割の注意点について解説したいと思います。

年金分割の対象となるのは厚生年金

年金分割の対象となるのはあくまで厚生年金です。国民年金は年金分割の対象とはなりません。そのため、夫婦いずれも会社に勤めて厚生年金保険料を納付した実績がないという場合は年金分割することはできないということになります。

年金の受給額を分割するものではない

「年金分割とは」の箇所でも述べましたが、年金分割は婚姻期間中における厚生年金の「保険料の納付実績」を夫婦で分割するものです。将来受給する年金額自体を分割するものではありません。実際に受け取れる年金額は保険料の納付期間や納めた保険料の額等によって変動します。

分割されても年金を受け取れるわけではない

年金分割されても必ずしも年金を受け取れるわけではありません。分割されたものを含めた年金を受け取るためには年金を受け取るための要件(※)を満たす必要があります。年金分割されても要件を満たさない限り、年金を受け取ることはできません。

※老齢基礎年金は受給資格期間が10年以上、年齢が65歳以上であることが基本の要件です。老齢厚生年金は老齢基礎年金の受給資格期間を満たしており、かつ、厚生年金の加入期間が1か月以上であることが必要です。

請求期限

前述のとおり、年金分割には請求期限があります。合意分割、3号分割ともに、原則として離婚成立日の翌日から起算して2年以内が請求期限です。

 

今回の内容は以上となります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の執筆者
小吹 淳

こぶき行政書士事務所 行政書士 小吹 淳
HP :https://rikon-gyouseishoshi.com/

離婚協議書、離婚公正証書をはじめとする家族(夫婦)間契約書を中心に作成する行政書士です。書面作成、その他面談等ご希望の方は、本サイトの「お問い合わせ」又は上記HPの「お問い合わせ」よりお気軽にご連絡ください。

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