今、あなたは以下の疑問をお持ちではありませんか?
■ 離婚するにあたって慰謝料を請求できるのかな?
■ 請求の条件とかあるのかな?
■ 自分でできることはあるのかな?
■ 請求できるとしていくら請求できるのかな?
■ 注意点を教えてほしい
この記事は上記の疑問、お悩みにお応えする内容となっています。
離婚するにあたってクリアしなければならない問題が「お金」ことだと思います。「慰謝料」もその中の一つですね。
ただ、そもそも慰謝料を請求できるのか(請求の条件は何か)、請求するために今のうちから何かやっておくべきことはないか、請求できるとしていくら請求できるか、などいろいろ疑問がわいてくると思います。
そこで、記事の前半では慰謝料請求するための条件や請求に必要な証拠について解説します。また、中盤から後半では離婚慰謝料の相場や請求の際の注意点について解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、慰謝料を検討する上での参考にしていただけると幸いです。
離婚の慰謝料を請求するための条件
離婚するからといって、必ず慰謝料を請求できるわけではありません。慰謝料を請求するためには以下の条件をクリアする必要があります。
① 配偶者が裁判上の離婚理由にあたることをしたこと
② ①により精神的苦痛を受けたこと
③ ①、②を証拠により証明できること
④ 婚姻関係が破綻していなかったこと
⑤ 時効が完成していないこと
①配偶者が「裁判上の離婚理由」にあたることをしたこと
以下、裁判上の離婚理由にあたるかどうかみていきましょう。
不貞
裁判上の離婚理由(不貞)にあたります。
不貞とは配偶者がその自由意思であなた以外の第三者と肉体関係をもつことです。なお、肉体関係をもたなくても、不貞と同程度の違法性が認められる場合(不倫相手との親密度が高い場合)には、低額ですが慰謝料が認められることがあります。
悪意の遺棄
裁判上の離婚理由(悪意の遺棄)にあたります。
悪意の遺棄とは、要するに、意図的に夫婦としてやるべきことをやらなかったということです。
■ たびたび家に帰らない
■ 不倫相手の家に入りびたっている
■ 生活費を入れない
■ 生活費の大半をギャンブルや趣味に消費する
■ 家事・育児を放棄している
■ 働けるのに働かない
などが悪意の遺棄にあたりうる例です。
DV
裁判上の離婚理由(婚姻を継続し難い重大な事由)にあたります。
DVには、殴る・蹴るなどの身体的暴力のほか、
■ 性 的 暴 力:セックスを強要する など
■ 経済的暴力:生活費を入れない、渡さない など
■ 社会的暴力:外出を認めない、行動を監視する など
も含まれます。
セックスレス
裁判上の離婚理由(婚姻を継続し難い重大な事由)にあたる場合とあたらない場合があります。
あたる場合とは、配偶者にセックスを申し入れたのに、正当な理由なく拒否し続けられた場合です。つまり、セックスを拒否され続けられたことで、婚姻関係を修復できないほどに重大な支障が生じたといえることが必要です。
性格の不一致
裁判上の離婚理由にはあたりません。
夫婦とはいえ、もともとは血のつながっていない「他人」なわけですから、お互いに価値観も常識も異なって当然です。それゆえ、不貞などと異なり、どちらが完全に悪いということはないはずです。それゆえ、性格の不一致だけでは慰謝料請求することはできません。
②①により精神的苦痛を受けたこと
慰謝料は精神的苦痛の程度を金額に換算したものです。1回限りの肉体関係でも不貞であることにかわりありませんが、慰謝料を請求するには、1回よりも2回、2回よりも3回というように、ある程度の反復・継続性が必要です。
③①・②を証拠により証明できること
配偶者に「裁判上の離婚理由があること」は、慰謝料請求するあなたに証明する責任があります。協議では裁判ほどの厳格さは求められませんが、配偶者が事実を否認する場合にはやはり証拠が必要となります。
④婚姻関係が破綻していなかったこと
配偶者が不貞などを行っていた当時、すでに婚姻関係が破綻していたと認められる場合は慰謝料請求することができません。なお、この場合は、婚姻関係が破綻していたことを配偶者が証明する責任があります。
⑤時効が完成していないこと
慰謝料請求する段階で時効が完成している(正確には配偶者が援用という手続きをとった)場合は慰謝料請求できません。
もっとも、離婚の慰謝料(離婚自体慰謝料)の時効期間は離婚時からスタートします。そのため、時効に注意しなければいけないのは離婚前よりも離婚後に慰謝料請求する場合です。詳細は以下の記事で詳しく解説しています。
慰謝料請求のために集めておくべき証拠
前述のとおり、慰謝料請求するには、配偶者に否定された場合に備えて、裁判上の離婚理由(事実関係)を裏付ける証拠を集めておくことが必要です。以下では、不貞、悪意の遺棄、DV、セックスレスにわけて集めておくべき証拠をご紹介します。
不貞の証拠
■ 動画:配偶者と不倫相手が性交渉したことがわかるもの
■ LINE・メール:肉体関係をもったことをうかがわせる内容のもの など
悪意の遺棄
【別居(家出)に関する証拠】
■ 住民票:別居(家出)したことがわかるもの
■ 賃貸借契約書:別居している家のもの
■ 日記、メモ紙:別居の経緯を記した日記、メモ
■ 音声データ:同居を拒否したことがわかるもの
■ LINE・メール:一方的に別居したことがわかるメール など
【生活費を入れない、家事・育児の放棄に関する証拠】
■ 源泉徴収票
■ 給料明細書
■ 預金通帳
■ 写真・動画:家事・育児放棄がわかるもの
■ 日記、メモ:生活状況を記録したもの など
DV
■ あなた自身の証言
■ 家族の証言
■ 診断書
■ 写真:負傷部位を撮影したもの写真画像
■ 動画・音声データ:DV状況がわかるもの
■ 警察やDV相談センターに相談した際の相談記録 など
セックスレス
■ 日記、メモ:生活状況、性生活状況に関する
■ LINE・メール・音声データ:性交渉が拒否されたことがわかるもの など
離婚の慰謝料の相場
離婚の慰謝料は、
■ 悪意の遺棄 ➡ 0円~300万円
■ DV ➡ 50万円~500万円
■ セックスレス ➡ 0円~100万円
が相場です。
ただ、上記の金額はあくまで目安です。実際の金額、後述する慰謝料の増額・減額要素(個別事情)を加味して決定します。
増額要素(配偶者に強く主張できる要素)が多ければ多いほど高額な慰謝料を設定すべきです。一方、増額要素がそれほどない状態で高額な慰謝料を設定すると、配偶者側から慰謝料の大幅な減額を主張されてしまう可能性があります。
離婚の慰謝料に影響する増額・減額要素
離婚の慰謝料に影響する増額、減額要素については、以下の記事で詳しく解説しています(不貞に関する説明ですが、悪意の遺棄・DV、セックスレスにも応用できます)。
相場以上の慰謝料を勝ち取るコツ
「これまで苦しい、辛いを想いをしてきた分、高額な慰謝料を勝ち取りたい!」、誰しもこう思うのではないでしょうか?そこで、以下では、高額慰謝料を勝ち取るためのコツをご紹介します。
相場以上の金額を請求する
まず、一つ目に、相場以上の金額を請求することです。
配偶者が請求を認めても減額交渉をもちかけられる可能性がありますから、当初は減額分を上積みした慰謝料を請求しておくとよいです。
話し合いで解決する
二つ目に、協議(話し合い)で解決することです。
協議で解決できない場合は調停、調停で解決できない場合は裁判へと手続きを進めなければいけません。しかし、調停や裁判では過去の事例(判例、裁判例)が重要視されます。また、相場以上の慰謝料を請求するには、増額要素・減額要素について的確に主張・立証し、裁判官(調停員)の心証を得なければいけません(納得させなければいけません)が、難しいのが現実です。
一方、協議では調停・裁判ほどの厳格さは求められませんし、当事者が合意した金額がそのまま請求できる慰謝料となります。もっとも、協議での解決を目指す以上、慰謝料や離婚の条件面で譲歩できる点は譲歩する姿勢も必要です。
証拠を集めておく
三つ目に、証拠を集めておくことです。
まず、不貞、悪意の遺棄、セックスレスなどの裁判上の離婚理由に関する証拠を集めておきましょう。必要十分な証拠を集めておけば、配偶者に事実を争われることを予防でき、結果的に協議での解決を目指せます。
また、あなたがこれまでどれだけ苦しい想いをしてきたのか(不貞・悪意の遺棄・DVなどの期間、回数、行為の内容)、については、慰謝料の金額に大きく影響する部分です。そして、その事実はあなたに証明責任があります。証拠を集める際は、慰謝料の増額要素のことも十分念頭に入れておく必要があります。
弁護士に相談、依頼する
最後に、弁護士に相談、依頼することです。
離婚を中心に取り扱う弁護士であれば、相場以上の慰謝料を勝ち取るコツ、話し合いで解決するコツ、話し合いを有利に進めるコツなどを熟知しています。費用はかかりますが、慰謝料から回収できれば、依頼しない場合よりも高額な慰謝料が手元に残る可能性があります。
慰謝料請求する際の注意点
最後に、これまでにご紹介しきれなかった注意点をまとめてご紹介します。
書面に残す
配偶者と慰謝料について合意できたら口約束で終わらせず、書面に残すことが必要です。具体的には強制執行認諾付き公正証書(※)、あるいは協議離婚書を必ず作成しましょう。
高額だと税金がかかる可能性がある
離婚慰謝料は原則して非課税、すなわち税金(所得税、贈与税)はかかりません。慰謝料はご自分で稼いだ所得でもなければ、相手から任意で受け取ったお金でもないからです。
もっとも、相場をはるかに上回る金額を受け取った場合は贈与税がかかる場合があります。この場合の慰謝料は、税務署から「相手の任意(贈与)で受け取ったお金」と判断される可能性があるからです。
また、慰謝料の代わりに、財産分与として不動産を譲り受けた場合も要注意です。この場合は、贈与税のほか不動産取得税、登録免許税、固定資産税(市街化区域内なら都市計画税)がかかる可能性があります。
税金がかからないようにするには、慰謝料はお金で受け取るようにしましょう。また、税務署から指摘を受けた場合に備えて、公正証書などの書面を作成しておくとよいです(お金で受け取ったことの証明になるため)。
今回の内容は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。