【離婚前の別居】メリット・デメリット、8つの事前準備、進め方を解説

離婚の準備

離婚前の別居を検討中だけど

■ 別居のメリット・デメリットを知りたい
■ 事前に準備しておくべきことを知りたい
■ 別居の進め方を知りたい

この記事は上記のような疑問、悩みにお応えする内容となっています。

相手との別居はこれまでの生活環境、スタイルを変化させるということですしお金もかかりますから、簡単に踏み切れるものではないですよね。ましてや子供がいる場合はなおさらのことではないでしょうか?

そこで、この記事の前半では離婚前の別居を検討すべきケース、離婚前の別居のメリット・デメリットについて解説します。また、後半からは、仮に別居に踏み切るとした場合にやっておくべき事前準備の内容や別居の進め方について解説したいと思います。

離婚前に別居を検討すべきケース

離婚前に別居する理由や目的は様々だと思いますが、一般的には、以下のケースでは別居を検討すべきといえます。

DV、モラハラ、虐待を受けている場合

あなたがDV(※1)、モラハラを、子供が虐待(※2)を受けている場合は、生命・身体を守るためにも直ちに別居すべきです。

相手が頑なに離婚に応じない場合

あなたは離婚するつもりでも、相手が頑なに離婚に応じない場合は、別居をもちかけることで、相手に離婚の意思を明確に伝えることができます。

離婚条件に開きがある場合

離婚には合意しているものの、離婚の条件(親権、養育費、財産分与など)に開きがある場合も別居は効果的です。別居することで、離婚条件についてお互いが冷静に考えることができるようになります。

離婚前に別居するメリット

離婚前に別居するメリットは次のとおりです。

DV等の被害から免れることができる

前述のとおりです。

プレッシャーやストレスから解放される

相手と物理的に距離を置くことで、これまで受けていたプレッシャーやストレスから解放されます。

相手に離婚意思を明確に伝えることができる

前述のとおりです。

冷静に離婚に向けた話し合いができる

相手と一緒に生活してるとどうしてもお互いが感情的になりがちです。別居して気持ちを落ち着けることで、冷静に離婚に向けた話し合いを進められる可能性があります。

離婚後の生活のシミュレーションができる

別居後の生活は離婚後の生活の疑似体験のようなものです。実際に相手と距離を置いて生活してみることで、離婚しても生活していけそうか、難しいそうかが分かる可能性があります。

自分の気持ちを見つめ直すきっかけになる

相手と一緒に生活している間はなかなか自分と向き合う余裕や時間をもてない場合も多いです。別居することできちんと自分の気持ちと向き合い、冷静に離婚か修復かを考えることができます。

関係修復につながる可能性もある

別居することではじめて、お互いがこれまでの相手に対する言動を振り返り、相手の大切さや良さを再認識し、それが関係修復へとつながる可能性もあります。

 

離婚前に別居するデメリット

一方、離婚前に別居するデメリットは次のとおりです。

経済的な負担が増える

別居後は、婚姻費用(生活費)だけで生活するのは難しく、経済的にも自立した生活を送らざるをえません。、特に、無職・無収入の方が突然、別居せざるをえなくなった場合に一番困るのが経済面といえます。

※国民健康保険料、国民年金保険料を負担しなければならない場合も
たとえば、夫が自営業者の場合、国民健康保険料、国民年金保険料を納付していると思いますが、両者とも「住民票上の世帯主」が負担することになっています。そのため、別居後に住民票を移し、ご自身が住民票上の世帯主となるとご自身で保険料を納付していかなければいけません。国民健康保険では免除、減額、国民年金では免除、猶予の制度がありますので、猶予負担が大きい場合は、経済的に納付が難しい場合は早めに役所の担当者に相談しましょう。

離婚に向けて突き進む可能性がある

別居すると修復に向かう可能性がある一方で、お互いの気持ちが離れ離れになり離婚に突き進む可能性も大いにあるといえます。

労力と時間がかかる

後述しますが、別居するとしても離婚を見据えて別居前にやるべきことが様々あります。相手との話し合いも必要です。準備を整えて別居するにはそれなりの労力と時間がかかります。

別居前からやるべき8つのこと

別居後の生活に困らないためにも、別居前からしっかりとした準備を行っておくことが理想です。

別居後の収入・支出をシミュレートする

まずは、別居後の収入・支出を洗い出し、別居しても実際に生活していけそうかシミュレートしてみましょう。

収入面が不足している場合は、離婚後の生活も見据え、就職、転職、資格取得等から自力で稼いでいける力をつけなければいけません。後述する婚姻費用だけでは生活していけないと考えておいた方がよいです。児童手当は貯金に回すぐらいの余裕があった方がベストです。

家計収支表(←クリック)を作りましたのでよろしければダウンロードしてご活用ください。収支を計算して不足分を明確にすることで、相手に婚姻費用の希望額を伝えやすくなります。

※児童手当
現在、相手が児童手当の受給者となっている場合、別居後は、①別居中であること、②離婚に向けた話し合いを進めていること、を証明する書類(①の例として「異動後の住民票」、②の例として「離婚協議申し入れにかかる内容証明郵便の謄本」、「調停期日呼出状の写し」など)を市区町村に提出し、児童手当の認定請求を行うことで、児童手当を受け取れるようになります。

別居後の子供の生活について検討する

子供について特に検討すべきなのは

■ 転入園、転校
■ 面会交流

です。

子供に関する準備については以下の記事で詳しく解説しています。

※親権のことを考えるなら、子供と離れて暮らしてはいけない
離婚に合意できた場合、離婚前に決めなければいけないのが親権者です。親権者を決めるにあたっては、これまでの監護状況のほか現在の監護状況等を重要視されます。離婚後、親権者になることを望む場合は、子供と離れて暮らしてはいけません。

 

婚姻費用の希望額を考える

婚姻費用は別居後の生活費のことです。相手よりも収入が低い場合や別居後も子供を養育する場合は相手に請求できます。婚姻費用の決め方などについては以下の記事で詳しく解説しています。

 

別居期間を考える

別居期間は別居する目的によっても変わってきます。修復、冷却期間の意味合いが強い場合は短期間にとどめた方がよいです。一方、はじめから離婚しか頭にない場合はあえて期間を設けないという選択肢もあります。

なお、離婚に必要な別居の期間は通常「3年~5年」、不貞などをした有責配偶者の場合は「8年~10年」とも言われています。もっとも、お互いが合意できるのであれば、これより短い期間で離婚できるのはいうまでもありません。

別居後の住まいを考える

別居後の住まいは離婚後の生活や職場への通勤、子供の通園・通学に支障がない場所を探す必要があります。DV、モラハラ、虐待で別居する場合はシェルターの利用も検討する必要があります。

「公営住宅」という選択肢
別居後の住まいは、費用、手続き、別居後の負担を考えると「実家」がベストですが、難しい場合は公営住宅も検討してみましょう。自治体の中には、低所得者向けの公営住宅を運営しているところがあります。公営住宅に住むには所得条件など一定の条件をクリアする必要があります。詳細は別居先の自治体に問い合わせてみましょう。

荷物をリストアップ

婚姻前からもっていたもの、婚姻後でも個人的に使っていたものは必要であれば持ち出してもかまいません。たとえば、

【別居時に持ち出してよいもの】
□ 当面の生活費
□ 身分証明書(運転免許証、パスポート、マイナンバーカード、健康保険証)
□ 自分名義の通帳、実印、キャッシュカード
□ その他の生活必需品(衣類、衛生品、化粧品、常備薬など)
□ 貴重品
□ 子供のために必要なもの(学用品、制服、おむつなどの育児用品)
□ 思い出の品、記念品
□ 以下で紹介する証拠

などです。別居後は取りに戻ることはまずできませんので、漏れがないか何度も確認してください。

一方、相手名義のもの、個人的なものはもちろん、婚姻後に夫婦の協力で築いたと認められる財産(共有財産)も、持ち出すとトラブルの原因になりますから持ち出してはいけません(※)。

※別居時に夫名義の口座から預貯金を引き出した場合は?
別居時に生活費の足しにしようと夫名義の口座から預貯金を引き出す方もおられると思います。夫名義の口座の預貯金も、婚姻後に夫婦の協力で築いたと認められる限り共有財産ですが、妻が引き出した分は婚姻費用ではなく、財産分与において清算されるのが基本です。たとえば、別居時の財産分与対象額が100万円で分与割合が2分の1の場合、夫は50万円、妻も50万円取得します。ただ、妻が別居時に夫名義の口座から20万円の預貯金を引き出していた場合は、夫が20万円の半額を本来の分与額(50万円)にプラスした60万円、妻が40万円を取得し、夫が妻に20万円の支払いを請求できます。前述のとおり、原則として、預貯金の引き出しは婚姻費用においては清算されませんから、妻の引き出しを理由に夫が婚姻費用の支払いを拒否したり、減額を主張することはできません

 

証拠を集める

別居後は、離婚や慰謝料請求を検討しなければいけません。その際に、あなたの主張を強力に後押ししてくれるのが「証拠」です。

ただ、一度別居してしまうと、証拠隠滅されるなどして証拠を集めることが難しくなってしまいます。可能な限り、別居前に証拠を集め、忘れずに前述の荷物とともに持ち出すようにしてください。

【不貞に関する証拠】
■関連記事:不倫の証拠を【実物付き】で一挙ご紹介!集め方などもあわせて解説
【DV・モラハラ・虐待に関する証拠】
■関連記事:【離婚の準備リスト付き】離婚を切り出す前にやっておくべき4つのこと
【その他の離婚理由に関する証拠】
■ 相手が購入した嗜好品、贅沢品の写真
■ 生活費が振り込まれていない預金通帳の写し
■ 消費者金融から届く請求書、督促状等の写し
■ ケンカの様子を記録したボイスレコーダー、動画、写真
■ 日記、相手からのメール
【親権に関する証拠】
■関連記事:専業主婦だと親権は獲得できない?獲得するためにやるべきこととは?
■関連記事:父親は親権を取れる?取るためにやるべきことや取れない場合の対処法
【財産分与に関する証拠】
■関連記事:財産分与とは?対象となる財産、分与の手順・方法まで詳しく解説

離婚前の別居の進め方

別居の意思を固めて準備が整ったら、DV、モラハラ、虐待を受けている場合など緊急性が高い場合を除き、相手に別居を切り出し、今後についての話し合うのが基本です。

もともと、夫婦は、法律上、同居義務を負っていますから(民法752条)、一方的に別居すると、相手から「同居義務違反」、「悪意の遺棄」などと主張され、話がこじれる可能性があります。相手に断りを入れてから別居するのが基本です。

別居の切り出し方は口頭(電話を含む)、メール、手紙などの方法が考えられます。まずは、感情的にならず、別居したい旨や決断に至った理由についてシンプルに伝えましょう。

その上で、話し合いができるのであれば、

【別居の話し合いで話し合うこと】
■ 婚姻費用
■ 別居期間
■ 子供の監護養育(面会交流の方法など)
■ 別居中の共有財産の処分
■ 別居中の不貞(必要であれば)
■ 別居中の誓約事項
■ 合意内容に違反した場合のペナルティ

などについて話し合って合意しておきます。合意できた場合は、今後のためにも(別居)合意書を作成しておくとトラブルの防止につながります。一方、話し合いができない場合は、別居後に「婚姻費用の分担請求調停」(必要によっては「面会交流調停」)を申し立て、婚姻費用(や面会交流)について取り決めましょう。

 

別居後にまずやるべきこと

別居した後もやることは様々ありますが、特に優先すべきことは以下のとおりです。

転出届・転入届、転居届

転出届は、現在の市区町村とは異なる市区町村に別居する場合に、現在の市区町村の役所宛てに行う届出です。転入届は、前の市区町村とは異なる市区町村から別居してきた場合に、新しい市区町村の役所宛てに行う届出です。転居届は、現在の市区町村と同じ市区町村内に別居する場合に、現在の市区町村宛てに行う届出です。

いずれも別居した日から14日以内に行う必要があります。

住民票の異動

住民票を異動させるかどうかは、別居の目的や別居期間によっても異なってきます。修復や冷却期間を設けるため別居期間を短期間にとどめる場合は異動させる必要性は低いです。一方、離婚を前提とした別居の場合は異動させる必要性は高いといえます。

保育園、幼稚園への転園、学校への転校には住民票の異動が必要となる場合もあります。また、住民票を異動させることで、児童手当を受給できるようになる、公営住宅への入居申し込みが可能になるなどのメリットもあります。

一方、夫が自営業者の場合は国民健康・国民年金保険料を納付しなければならなくなる、郵便物が元の住所宛てに届いてしまうなどのデメリットもあります。負担が大きい場合は、保険料の免除や猶予の制度を活用できないか担当者に問い合わせておきましょう。

住民票の閲覧・交付制限をかける

DV、ストーカー行為、児童虐待またはこれらの準ずる行為の被害者の場合は、お住いの市区町村に住民票の閲覧・交付制限(正確には「住民基本台帳事務における支援措置」。以下、「支援措置」といいます)を申し出ることができます。

申出が受理された場合は、加害者から住民票等(戸籍の附票等を含む)の閲覧・交付の請求・申出があった場合でも、開示を制限する措置が講じられます。また、加害者が第三者になりすましたり、第三者を介して閲覧・交付を求めてくるのを防止するため、本人確認や請求事由がより厳格に審査されます。

申出を受けた市区町村は、警察、DVセンター、児童相談書の意見や裁判所が発する保護命令決定書などによって支援措置が必要かどうか判断します。そのため、支援措置を受けるには、申出を行う前にこれらの機関に相談しておくことが必要です。

児童手当の受給者変更

前述のとおり、別居後は、一定の手続きを経れば児童手当を受給できるようになります。忘れずに手続きしておきましょう。なお、DV被害の認定を受けることができれば、児童扶養手当の受給も可能となります。

児童扶養手当の受給認定申請

児童扶養手当はひとり親家庭に向けた給付金ですから、離婚前は受給できないのが基本です。ただ、親から1年以上遺棄されている児童(※)、親がDVの保護命令を受けている児童は受給対象となります。

※児童扶養手当は子供が18歳になる年度の3月31日まで受給できます。「遺棄」とは、婚姻費用(生活費)を振り込まないことなどが典型です。

婚姻費用の分担請求調停を申し立てる

別居前に婚姻費用について話し合うことができなかった場合は、別居後に調停を申し立てましょう。

面会交流を実施する

別居前に面会交流について取り決めた場合は、条件を守って面会交流を実施します。取り決めることができなかった場合は「面会交流調停」を申し立て、調停で取り決めることもできます。

 

今回の内容は以上となります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の執筆者
小吹 淳

行政書士、夫婦問題(離婚)カウンセラー | 大学卒業後、官庁勤務(約13年)→法律事務所勤務(約4年)を経て現在に至ります | 現在「離婚協議書、離婚公正証書の作成&サポート」、「夫婦問題・離婚カウンセリング
」業務を中心とする行政書士事務所開業に向けて準備中です | 本サイトでは離婚で役立つ情報をわかりやすく解説しています | 二児の父親 | 趣味はサッカー観戦と旅行

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